ワークショップ

プリントのワークショップに参加しています。

ゼロ回目とも言えるプレの段階から参加してVol.1の初日、そして二日目のお手伝いまでやったので計三回おなじレッスンを受けたことになります。

http://www.takeuchi-studio.jp/gallery_em/workshop.html

デジタル・ゼラチンシルバーモノクロプリントと書けば「なんのこっちゃ?」と聞かれてしまいそうです。

デジタルカメラで撮ったデータをモノクロに変換→反転したものをインクジェットプリンターで製版フィルムに出力します。それがネガになるんですね。これをアナログの印画紙に密着でプリントするわけです。

この技法はプラチナプリントをやっている人たちの間では一般化しつつあります。ところが銀塩のプリントには向かないと言われてきました。主な理由はレンジの狭さです。プラチナプリントは見た目の印象とは違って数値的なレンジは狭くデジタルで出力したネガとの相性がよかったのです。銀塩の印画紙はトーンカーブで言うとハイライトとシャドウ部の足が長く、そのまま出力したネガを使うと、いわゆる「ネムイ」プリントになってしまいました。

講師の永嶋勝美氏はネガ用のプロファイルを作成したらどうだろうと考えました。リップで対応するのが本筋なのですがソフトの開発には億単位のコストがかかるので現実的ではないからです。試行錯誤の末できあがったプロファイルを使ってのワークショップです。

詳細は秘密ではないのですが自分の技術ではないので割愛します。

わざわざデジタルの写真を銀塩で焼いて何の意味があるんだと考える方もいるでしょう。

僕が期待したのは銀塩の黒でした。モノクロの印画紙は純黒調、温黒調、冷黒調などがあり色合いもメーカーによって異なるので好みの黒を選ぶことができます。こればかりはインクジェットでは無理です。

もうひとつは紙の色です。市販されているほとんどのインクジェット用ペーパーには蛍光増白剤が使われていて、昔から写真に親しんでいる者の目には違和感がありました。

ちゃんとトーンが出てくれるならこういった悩みから解放されるのではないかと思って参加したんです。

結果は想定外のサプライズもあって満足を通り越してのめり込みそうです。

ワークショップの流れを追って説明します。

まずは説明を受けながらデジタルネガから焼いたプリントを見せてもらいます。

永嶋氏が数年前に携帯で撮った写真から焼いたプリントを見たとき参加者たちから驚きの声が上がりました。

130万画素、色もトーンもプアなデータから美しいモノクロプリントが「生まれた」と感じました。

これはけっしてオーバーな表現ではなく実際に見ていただいたら納得できるはずです。

RCペーパーとバライタ印画紙とのトーンの違いにも驚きました。

銀塩の印画紙が持つポテンシャルの高さを実感しました。

写真は奥が深い。

各自が持ち寄ったデータを永嶋氏が作成した変換テーブルとプロファイルでネガを出力してプリントをはじめます。

ひさびさの暗室作業は緊張しましたが・・・すごく楽しい。

他の参加者たちも同じようでした。

みんな写真が好きなんですねぇ。

僕が持ち込んだデータはホームページで公開している風景写真です。

トーンがまんべんなく揃っているデータがいいだろうと考えたチョイスでした。

この写真を使ってVol.3までワークショップは続きます。

最終的にはアーカイバル処理を施したオリジナルプリントの制作をするそうです。

まずはデータをフォトショップでモノクロに変換してインクジェットで出力したプリントをご覧ください。

これはこれできれいなプリントなのですが・・・やはり紙が青く感じるし思っているよりかは薄いというか平板な印象は否めません。よく見えるだけが写真ではないはずです。

最初は2号で段階露光。

これで露光時間を決めて本焼き。

ちょっと硬めにしたかったので3号で焼きました。

ギャラリーのスポットライトで見ると、もっと焼き込んでもいいと思い露光時間を増やしたのがこれです。

デジタルの複写でどれだけ伝わるかが不安ですが普通に銀塩フィルムからプリントしたと言われてもわからないレベルのものができました。

とりあえず同一条件で撮影してカラーチェッカーパスポートで作成したプロファイルをあてたデータですが・・・どこまでニュアンスが伝わるでしょう?

最後の写真はネットで見ると暗く感じるかもしれませんが、実際に見るとシャドウ部のトーンと立体感に圧倒されます。

確実に言えることはデジタルの表現域が拡がったということです。

いままでアナログのプリントは引き伸ばし機が必要でしたがこの方法ではいらないので、これからアナログプリントをはじめたい人にもいいのではないでしょうか? コストもスペースも省けます。

それから引き伸ばしには焼き込みや覆い焼きというテクニックがありますが、この方法を使えばデータを修正すればいいんです。プロのプリンターでもまったく同じものを複数焼くのは至難なのですが、この問題も解決できます。

手持ちのデジタルカメラを使って銀塩プリントを作ることができる、つまり新しくアナログのカメラを買わなくてもいいというのも、これからはじめたいと思う方には魅力かもしれません。フィルム現像の手間を省くこともできます。

また、アナログではネガを損傷してしまうとアウトなのですが、これならすぐに同じネガを出力できるという利点もあります。

銀塩プリントの保存性は歴史が証明しています。未来に残すことを考えてもこの方法は優れています。

オリジナルプリントを制作するハードルが下がり親しみやすくなるなど、他にもいろんな可能性を感じることができました。

これからが楽しみです。